交通事故で不幸にも死亡される事態が生じた場合の保険金は一体誰が受け取ることになるかを考えてみよう。
交通事故の被害を被った人が生存している場合は、損害賠償金が加害者もしくは相手の加入している損保会社から支払われる。
受取人に関する問題は生じないことになるのが普通である。しかし、被害を被った人が死亡した場合はどうなるのか?
この疑問を解決する糸口となるのは法定上の相続人への権利移行という制度である。
この法定相続についてきちんと理解しておく必要がありそう。法定相続の第一位の考え方について以下に詳述してみることにしよう。
【法定相続】
★第一位の法定相続は配偶者である。配偶者について、いかなるケースで生じていても第一位の権利をもつことになる。これは揺るぎない事実である。
★第二位の法定相続は子供に権利が移行する。仮に子供が死亡していていない場合は、死亡した子供の子供に移行する。つまり、死亡した被害者から見ると孫に相当し、その孫に法定相続の権利が移行することになっている。
★死亡した被害者の子供、孫、ひ孫というように、繰り下がりの形で法定相続の権利が移行する。
★死亡した被害者の配偶者がいない場合は、あるいは配偶者がいるにも拘らず子供、孫等がいないケースにおいては、両親に法定相続が移行することになる。
★死亡した被害者に子供をはじめ、両親もいないという場合は、死亡した被害者の兄弟に法定上の相続が移行する。
★仮に、その兄弟が死亡している場合には、繰り下がりのルールに則り、死亡した兄弟の子供、甥、姪というように相続権利が移行することになっている。
★死亡した被害者と配偶者に子供がいなく、かつ兄弟や両親が死亡している場合は、法定相続は配偶者だけということになる。
次に、受け取る保険金の分配の相続割合は法定上は決められている。しかしながら、損保会社からの損害補償金に対する相続割合には取り決めがない。このことが問題をより複雑にしているのが現状であろう。相続割合に関しては、そこには必ずといっていいほど相続税の問題が絡んでくるため、考え方等が複雑になっていることに留意する必要がありそう。
[課題-1]
残された親が非常に高齢である場合、法定で定められた相続割合によって損害補償金を受け取ると、受け取った親が死亡した事態が発生した時に、子供に相続税が生じてしまう。
ということで、予め相続税が発生しないように相続割合を再設定して減額する措置がとられているし、現実にこのようなことが起こっている。
[課題-2]
逆に子供が幼いケースでは、子供の将来を考慮した上で、はじめから子供名義の損害賠償金の受取人にするケースも発生してきている。
[課題ー3]
上述の課題-1、課題ー2において、一番の問題はお金に関する争いが起こりがちであるといことである。
これは何といっても、複数の相続人での人間関係によるところが大きいといえる。この問題は一口では述べられなく、とても厄介である。
死亡した被害者に不動産を筆頭に固定資産や流動資産である現預金を有しているというケースでは、裁判所においてそれらを含めたトータル的な面を考察して法定割合に準じた相続のための和解案を提示する事態が発生している。
[課題ー4]
更に問題を難しくしているのは、死亡した被害者に配偶者と子供がいる場合において、法定上の相続権利がないにも拘らず、死亡した被害者の親から損害賠償金の受取を要求される事態が発生するというケース。
親にしてみれば、「子供が交通事故にあって死亡することになって・・・。」という強く激しい感情と気持ちになってはいるものの、相続権利がないため、事後になって配偶者に対して強く賠償金をこちらに渡してくれと個人的に請求するケースが生じる。
このようなケースを少しでも打開する方法として、慰謝料請求権を加害者、損保会社に対して行使する事ができることを頭の隅にインプットすることである。
【税金問題】
よくある質問事項に、自動車保険を受け取った場合に、税金は科せられるのか?ということを耳にする。基本的にいえば、賠償金という名目で受け取れば、入院費、通院費、治療費等として利用されることから税金は科せられない。
しかしながら、人身事故等によって受け取る保険金や自分自身の掛けている保険会社からの受ける保険金には税金が科せられる場合がある。
[過失割合]
例えば、車と車の事故で運転者が死亡したケースにおいて、最終的に「自分対相手の比率が6:4」に決定して保険金として100,000,000円が支払われる事態が発生。
これを相手が比率が4であるため、40,000,000円に相当する額を差し引いた額60,000,000円が課税対象金額となる。
契約者が誰であるかによって、税金の種別が変わってくる。
契 約 者 | 税金種類 | |
1 | 死亡した被害者 | 相続税 |
2 | 保険金受取人 | 所得税 |
3 | 死亡した被害者でも保険金受取人でもない | 贈与税 |
ということで、損害保険金を受け取った場合、実際問題、税金が多く徴収されることになり、手元には先ずもって残ることはほとんどないといっていい。
損害による保険金は受けた損害すべてにおいて補償を満たすことはできないといっても過言ではないであろう。