移動体に通信システム分野におけるIT技術を連結させて、様々な情報サービスを即時に提供することをテレマティクスという。
目覚ましい発展を続けているIT技術が自動車と連結、つまり自動車そのものをIT化させて、カーライフのより楽しさ、色々な活用方法が創出されて可能性を無限に広げていくことを目指したものに間違いはないと思われる。<注>遠隔通信(テレコミュニケーション)及び情報科学(インフォマティクス)の2語が合わさって出来た用語がテレマティクスである。
このテレマティクスを自動車に適用させようとして活かす動きをキャッチして世に出しているのがテレマティクス保険である。
先般、国交書では安全運転を促進する一環としてテレマティクス保険を打ち出していて、要は運転手毎の走行距離、運転の特性等に関するデータを分析した上で、保険料を算出することを奨励し始めている。即ち、保険料率は運転状況に応じた形で決定される仕組みである。この保険スタイルはまさにこれからの時代にふさわしい新しいスタイルの保険となるに違いないと思われる。
テレマティクス保険の歴史や経緯
1990年前半になって始めてこのテレマティクス保険が本格的に出現、たちまち注目を浴びるようになる。
そもそもこの保険はアメリカの保険会社プログレッシブによって発表された保険で、研究と実証実験を繰り返した後、新たな保険として普及のための力を尽くす。この保険を編み出す際に研究したテーマは「走行距離と交通事故を起こすリスクとの関係」について明らかにすることであり、その結果、走行距離連動型という考えを導入することに成功。自動車保険が高いアメリカにおいては一つの光を照らすことになる。
つまり走行距離と運転の仕方が従来の保険料より安くなる可能性がある!
ことに着眼したのである。
従来の保険は等級制度に対して警鐘を鳴らしているといえると筆者は考える。等級制度は経験をベースにしているため、初めて免許を取り、車を買った場合、経験値がゼロであることから、安いことの恩恵を受けるまでに時間を要してしまう嫌いがある。これは車離れを助長している要因として考えられている。
テレマティクス保険の種類やタイプ
走行距離と運転行動の2つに大きく分けてテレマティクス保険は構成されている。つまり、走行距離を連動させたタイプ(=PAYD)と運転行動を連動させたタイプ(=PHYD)の2種類があり、算出基準で指標は2種類で異なる。
種 別 | 指 標 | 注 釈 |
PAYD(走行距離連動型) | ●運転日時●運転総時間 ●運転頻度 ●運転距離 ●運転場所 | 走行距離が長いと保険料は高くなる。走行距離は比較的短い週末ドライバーは保険料は安くなる。 |
PHYD(運転行動連動型) | ●最高速度●平均速度 ●アクセル/ブレーキ頻度及び強さ ●車線変更速度と頻度
| 速度超過、急激な速度変化がある場合は保険料は高くなる。そうでなければ安全運転者ということで保険料は安くなる。 |
従来の保険ではドライバーの運転に関するデータとそれらデータを元にした事故発生の確率は算出不能に近かったために、過去の事故歴や本人の年齢、車種等を基準して料率が決められることを行なっている。
これに対してテレマティクス保険は運転に関するデータは蓄積かつ分析されて、より正確に近い状態で料率が決められて適用されるため、今まで以上に公平な仕組みが図られるようになった。
ということは、常日頃から安全運転を心がけているドライバーにとっては公平性の恩恵を受けることが可能となった。
より安全運転が保険料の抑制に繋がっていく!
ということは、テレマティクス保険は運転歴とその影響を受けている等級制度に対する問題点が浮かび上がり、今後はますます公平感の色合いが濃厚になると考えられる。
あくまでも運転行動データ等に基づいているのである。これらのデータはスマホ等に送信されて運転手の安全運転への意識が更に強くなっていくと見られているし、安全運転への促進を図っていくことになるであろう。
今後はテレマティクス保険の拡大が見込まれていて、欧米では2020年頃までに25%程度が旧保険からテレマティクス保険への移行がなされるであろうと予想されている。ビッグデータは更に進化して中古車流通に対しても影響を与えると巷ではささやかれている。
ビッグデータを中古車のトレーサビリティの分野にも裾野を広げていくと見られている。ビッグデータがモノをいうことになれば事故歴、修理の履歴、持ち主の履歴等様々なデータが判別することにできるようになり、流通の一助になること間違いなしという状況が生まれる可能性がありそう。
逆にドライバーに関するデータが損保会社にとって丸見えになるという個人情報保護面に問題が発生する懸念がある。
旧保険から移行する際に等級の高い運転手に対してどの程度保険料が安くなるのかという課題も出現してくる。このようなデメリット面もあるが、それにも増して交通事故が減少していくというメリットは見逃すことはできないであろう。