不幸にも、ある日突然、交通事故に見舞われたらどうしますか? でも、心配ご無用です。このようなケースが起きても、自賠責保険及び自動車保険(任意保険)から傷害程度に応じた補償を受けることができます。
しかし、会社を休んだ場合はどうなるのか?という疑問が浮かんでくるのではないでしょうか。この問題においても事前にチェックを行って知識を蓄えておくと、そのことが強力な味方になること間違いなしです。
交通事故での休業補償は自賠責と任意の両保険から補償されます!
このことをしっかりと頭のどこかに叩き込んでおきましょう。このことを知っていることで、示談交渉を優位に進めることができます。
自賠責の目的は車の事故で発生する人身事故を負った被害者を助けることで、全ての車には掛けられています。もうこれは車を持てば義務なのです。車を持つもの全員に科せられた義務です。自賠責の補償範囲は以下の通りです。
対象 | 自賠責 | 任意保険 | |
補償(相手) | ヒト | ケガであれば最大120万円、死亡であれば最大3,000万円、後遺傷害が残れば最大4,000万円の範囲を受けられます。 | 対人賠償 |
モノ | 補償はありません。 | 対物賠償 | |
補償(自分) | ヒト | 人身傷害及び搭乗者傷害 | |
モノ | 車両保険 |
このように自賠責の補償範囲は限定されており、この範囲を超える場合は対人、対物、本人と搭乗者、車という順位で任意保険の賠償範囲は拡充されています。
1.自動車保険 休業補償の支払基準(ケガをした場合)
加害者から治療費、慰謝料、休業補償の3種類の補償を受けることになります。
1-1.治療費 ・・・ 病院での治療費、処方される薬代金、手術費、入院費、その他諸々の雑費、交通費等全てが補償されます。被害者の支払は皆無です。加害者が加入している保険会社が病院との手続き一切を行いますので、被害者は全く関与する必要はありません。通院に要する交通費等については被害者から以下のモノを準備して提出する必要が出てきます。
[通院交通費明細書]
①通院月日、②通院期間、③利用した交通機関(電車・バス・タクシー等)、④交通費を記載して提出します。
タクシーを利用した場合は必ず領収書を添付すること。マイカーであれば、通常1km当り15円に走行距離を乗じて計算します。
1-2.慰謝料 ・・・ 事故で怪我した時に受けた精神的苦痛や肉体的苦痛に対する補償が慰謝料です。
1日当り4,200円が慰謝料の計算基準値に設定されていることから、例えば、11月1日に追突され、その結果としてムチ打ちを患ったとします。この例では、慰謝料の計算は10日間通院して11月30日まで治療がかかった場合の数値を使って計算されます。
通院日数=10日、総治療期間=30日ですが、そのうち、通院した場合は「通院日数x2」と総治療期間において日数が少ない方が慰謝料の計算に用いられます。
つまり、通院日数x2=20日と総治療期間=30日では、日数の少ない「通院日数x2」が利用され、4,200x20日=84,000円と計算されてこの84,000円が慰謝料として支払われることになります。
ここで注意することは、治療期間が長期になった場合はこの限りではないことです。その都度確認することがポイントとなります。
1-3.休業補償 ・・・ 事故で会社を休業せざるを得ない状況になった場合、原則として1日=5,700円が利用されます。仮にこの金額を上回る収入がある場合は、この収入を証明するモノがあれば自賠責の限度である19,000円が限度となります。もし、これ以上の金額である場合は加害者の任意保険から支払われることになります。
交通事故での休業補償 = 1日当りの収入 x 休業日数
ここで、留意すべきことは休業とは症状が固定されるまでに要した実日数休業のことをいいます。但し、休業日数には必ずしも休んだ日数が含まれないことに注意することが肝要です。
いずれにせよ、勤務している人や家族のために家事をしている人であっても休業補償の対象になります。家事を行っている人の場合には別途必要な書類を準備して提出する必要がでてきます。
1-3-1.準備すべき書類とその計算法
①雇用形態如何に拘らず勤務している人
準備すべき書類 | 休業損害証明書、源泉徴収票 |
計算法 | 休業補償 = 1日当りの給料 x 休業日数 |
1日当りの給料とは事故前の直近3ケ月の総支給額の平均総支給額のことを指します。つまり、事故前の3ケ月分の総支給額、すなわちを休業損害証明書を勤務先から発行してもらいます。
[例]事故前3ケ月の給料合計が60万円、事故による休業日数が20日とします。1日当りに給料=3ケ月給料合計60万円÷90日=6,667円/1日当りに給料。その結果、休業補償額 = 6,667円 x 休業日数20日 = 133,340円 となります。
②個人事業主、叉は自営業
準備すべき書類 | 確定申告書、納税証明書、課税証明書等 |
計算法 | 休業補償 = (前年度の給料 ÷ 365) x 休業日数 |
③家族従事者
準備すべき書類 | 家族記載の住民票、休業日数を証明する医師の診断書 |
計算法 | 休業補償 = 5,700円 x 休業日数 |
家族従事者の場合は自賠責の1日当りの基準が利用されます。
④会社経営者、役員 ・・・ 役員報酬は性格上、働けるか働けないかに関係せずに受け取るものであって、かならずしも労働対価としての収入を指すものではない。彼らの休業補償を以下の条件下ではじめて請求することができるのです。
■労働対価としての収入証明ができること。
■売上が事故前に比べて大幅減少している。
具体的数値は明確にはありませんが、概ね誰がみても売上がかなり減少していることが分かることがポイントとなります。
会社経営者、役員は労災保険に加入することが出来ないことから、休業補償を請求することはできません。そのためにも、このようなケースに備えて自分自身で自動車保険に入って休業補償に対する備えを行っている経営者・役員は多く見受けられます。こうすることでリスクを抑えることができます。
②念願かなって希望の会社から内定通知を受け取った人 ・・・ 内定先の会社から雇用契約書を入手することで、休業補償が認定されることがありますので、諦めないことが肝要です。
2.自動車保険 休業補償の支払基準(後遺症が残った場合)
肉体が原状回復に至らず、働くことや普通の日常生活に何らかの支障をきたすことが認定されるケースをいいます。このような損害ケースでは、主に慰謝料、遺失利益、将来介護費用の3種類があります。
2-1.慰謝料 ・・・ 病院で診察を受けた結果を基に、1級~14級の14段階のどれに位置付けられるかの査定が行われて、その査定された等級に対応した補償金額が支払われることになります。対応した等級の補償額には幅がありますので、対応した等級の最大金額を限度と設定されています。
2-2.遺失利益 ・・・ 査定された等級に応じて、労働能力が事故前に比べてどのくらい喪失されたかという喪失率が算定されます。と同時に喪失期間はどの程度とう係数も計算されます。こうして、逸失利益が算出され、補償を受け取ることができるようになります。
2-3.将来介護費 ・・・ 将来、家族が介護していくのか、お金を払って他人に介護を依頼するかによって計算は異なってきます。要は「介護が以下に大変であるか」ということを軸にして計算されます。これは専門家とよく相談することがポイントです。
3.自動車保険 休業補償の支払基準(死亡をした場合)
死亡による損害は主に、葬儀費、遺失利益、慰謝料の3つ補償があります。
3-1.葬儀費 ・・・ 60万円が基本ですが、葬儀費用の証明によっては100万円までの範囲で補償が受けられます。
3-2.慰謝料
補償対象者 | 補償金額 | |
被害者本人 | ¥3,500,000 | |
遺族 (両親、配偶者、子供) | 1名 | ¥5,500,000 |
2名 | ¥6,500,000 | |
3名 | ¥7,500,000 | |
扶養者 | ¥2,000,000 |
3-3.遺失利益 ・・・ 被害者が生きていたとして、将来に亘って得たであろう収入からこのくらい生活費がかかるであろう生活を差し引いた金額を補償金として受けることができます。遺失利益の通常の算出式は次の通りです。
遺失利益 = 前年収x(1-生活費控除)x(働ける年数・平均余命・ライプニッツ係数等)
4.自動車保険 休業補償 弁護士特約が付加されていた場合
契約している自動車保険に弁護士費用特約が付帯されている場合のことをいい、法律相談や相手との交渉等について弁護士に依頼したりしてその時の費用は保険会社が負担します。
弁護士の基準、すなわち裁判所の基準は、一般的には保険会社が定めている基準より高く設定されていますので、メリットは大きいです。因みに、この弁護士特約を利用しても保険の等級はダウンすることはありません。
弁護士特約を利用しても等級はダウンしませんし、補償が弁護士基準で計算されます。
5.自動車保険 休業補償と有給休暇の同時利用
自動車事故による休業補償と有給休暇は基本的に同時利用はできます。有給休暇は全額保障されるもので休業補償は7割~8割(保険会社によって異なる)という感覚です。その代わり有給休暇は減るものですから休業補償がされるのに使うのがもったいないという人もいます。
確かに同時に取ればそれだけ金銭面では得られるものが多いでしょうが体が治った後に有給休暇を使っても同じことのような気がしますよね。旅行もいけませんしね。休みづらい人でこの時についでにとってしまおうという方は良いかもしれません。